テトラポットの政

ひとりごと、ことばの新陳代謝

小学生の私と、魔法の言葉

まだ数回しかしゃべったことない教授に

 

インターンをやりたいって相談をしたくて

その人が一番話しやすそうで

声をかけた。

 

インターンするの初めてで

日本ですらやった事無くて

どうしていいかわからなくて

この事務所はすごく

有名だってわかっているのですけれど

彼も同じくここの卒業生だって聞いたので

チャレンジできないかなって思って

 

って

緊張しながら、

彼がスタジオのキッチンに入ろうとしたところを

呼び止めて矢継ぎ早に話した。

 

自信がないのを、

この自分が応募して良い場所なのか

不安に、というよりも、

笑われるんじゃないかなんて

こころのどこかで

心配していたのを

読み取ったかのように

 

どうして、

きみも有名じゃないか

 

って彼は大真面目な顔で返した。

 

びっくりして

一瞬固まって

 

いや、まだです

 

と笑って答えたけれど、

 

その一言は、

その一瞬は、

 

ロンドンに来てからもらったどんな言葉よりも

衝撃で

泣きそうなほど

優しくて、

 

どれだけ自分がいつまでも

自分の事を

学生で、アマチュアだと思っていて

そこから本気で抜け出そうとしようとしてなかった

ことを

見抜かれたような、

 

アジア人である劣等感を

奥底では拭いきれなかったそれを

一瞬で吹き飛ばすような、

 

魔法の言葉だった。

 

自分が小学生に戻ったような

そして先生と喋っているような

気持ちだった

自分は、こどもだった。

 

 

それが彼にとっては

ただの軽いジョークだったとしても

 

本当に有名になれたら

また彼と喋ってみたい

今日の事を

 

きっと覚えていないだろうけど