土曜のチェロ
彼の奏でるチェロが一階から聴こえる
それに重なる女性のヴァイオリン
音はぴったり寄り添っていて、
組木細工でつくられた精巧なテーブルのよう
曲の名前はわからない
のびのびと育った花があふれる小さい庭に置かれた
気取らない椅子に座ったときに頬に当たる風のように
軽やかに滑らかであたたかい
それを私は三階から聴いている。
午後に洗ったシーツが乾くように少し開けた窓から
鳥の声が入ってきて、そのメロディに加わる
もし出来ることなら今友人を呼んで、
玄関からではなく、この窓から、こっそり鳥を呼び込むように
その音を一緒に聴きたい
咳が出ないように少し口を押さえながら、
どこにも出かけられなかった土曜日の重い頭から
絡まっていた糸が一気に引き抜かれるように、
音は一糸乱れず通り抜けていく
今日は二月一四日