テトラポットの政

ひとりごと、ことばの新陳代謝

オレンジ色の闇

テトラポットがこわくなかった

 

島に行って、夜、

オレンジ色の街頭が一本だけ立つ

小さな波止場に

缶ビールを持って友人たちと腰掛けた

 

フナムシが海から這い上がって来て、

その彼らに光を当てて、

透き通ったエビみたいな体と

意外と可愛いつぶらな瞳を見た

 

波消し岩におりる階段があって、

四人でその岩に降り乗った

黒っぽいところはぬめぬめしていて

波は、透き通っていた

 

オレンジ色の光の下で、

色の分からない夜と友人たちの間で、

テトラポットはこわくなくなっていた

 

吸い込まれそうな闇はなくて、

瀬戸内の夜はあたたかくて

不安定な足下の上で、

疑いようのない安心を感じていた